この記事では、週刊少年ジャンプ2025年12号に掲載された「あかね噺」の第146席「帰ってきた」の感想と考察を書いて行きたいと思います!
前回の振り返りは下の記事になります!!
りゑんの登場。3年で変わったのかと思ったら少しも変っていませんでしたね。そう来なくっちゃって事で、あかねがどういう形で現状をひっくり返すのかに期待が膨らむ回になりました。
阿良川泰そん君もイイ感じのキャラですよね!
さぁ、あかねの‟二ツ目”の高座ってのを刮目!
期待と疑心の2つの目
弥栄亭の客席では落語記者・樫尾がウッキウキで阿良川あかねの高座を待っています。そこへ「隣いいかね?」と声をかけたのが学問先生。もちろん今日のお目当ては同じくあかねです。
フランス修行でどう育ったのか。こちらは期待の眼差し。
あかねの乗り物酔いはいくらか良くなった様子。しかし、りゑんが作り出した気まずい空気に変わりはない。そんな出番前のあかねの背中を見つめる弟弟子の泰そん。
兄弟子(ぐりこ?)からの評判が頭をかすめますが、どうだかな?といった態度。「お手並み拝見だな」と、泰そんからは疑心の目が向けられている。
そんな中、あかねが高座へと向かいます!
日本の寄席に帰って来た
出典:あかね噺|末永祐樹 馬上鷹将|集英社
颯爽と客前に出て来たあかね。
沢山のお客さんが入っています。あかねの口元がふっと緩みます。そして座布団を前に… え?座らない。立ったままのあかね。ざわつく客席。
そんな様子をいやらしい笑みを浮かべて見ているりゑん。効いてる効いてる、クックックって感じですよ。憎たらしいってもんじゃありません!前座の方は何がなにやら分からないといった感じ。
泰そんも苦い表情。
この時 あかねは日本の寄席に帰って来た事を実感していたのです。
フランスのホールにはない寄席の雰囲気、出て来た落語家を見るお客さんの表情、ざわめきすらも、あかねはその全身で受け止めたいと思ったのでしょうか。
ひとつ息をついて、さぁ演目のスタートです!
あくび指南
まくらもそこそこにネタに入ります。
出典:あかね噺|末永祐樹 馬上鷹将|集英社
あかねが選んだのは「あくび指南」です。
これは初めて見る演目ですね。
‟あくび”を教える「あくび指南所」というのがありまして。そこへあくびの仕方を教えてもらいに行くから付き合えってところから始まります。あくびの稽古ですか、どうぞ中へお入り下さい。
まず教わるのは‟夏のあくび”。
そこから語られる情景描写が圧巻であります!
出典:あかね噺|末永祐樹 馬上鷹将|集英社
このコマの情景がまさに聞いているお客さんにも見えているんですよね!その場にいるかのような。もう今では見れなくなった、のどかな隅田川の景色が浮かんでいる。
そこに浮かぶ舟の上にあかねがいて船頭さんと話しているのです。そしてタバコをふかしながら…「くぁ~っ」と一つあくびをすると、思わずつられて泰そんもあくびをしそうになる。
パチンと口を押えてあくびをこらえる泰そん。横を見ると前座やりゑんはあくびしちゃってます。何とも間抜けな表情で(笑
つられたのは自分達だけではなかった。
客席の全員がつられてあくびをいている。そこに、あかねが「みなさんはあくびしなくていいですよ」でドッカン!それに目を見開く泰そん!
すごい!!!
あかねと志ぐま師匠
ここのシーンというのはですね。
出典:あかね噺|末永祐樹 馬上鷹将|集英社
第123席‟志ぐまの高座”にて、志ぐま師匠が「死神」の演目でお客さんに見せた光景に重なるものがあると思うんですね。この時も‟噺の世界”に引き込んでいましたよね。
これをあかねもしている!
ここまで志ぐま師匠の芸に近づきつつある。洗練された表現力に裏打ちされた情景描写。まさにフランス修行で磨かれたもの!これにより、お客さんを‟噺の世界”に引き込む事ができている。
では、その次の段階まで到達しているのか?です!
まだネタは途中なんです。後半があるんですよね。そこであかねが見せる(魅せる)のかどうかなんです。それが何かと言うとですね。
出典:あかね噺|末永祐樹 馬上鷹将|集英社ゾーン
‟ゾーン”に入るかどうかです!
芸の世界でも極限の集中状態に入る事が稀にある。こう学問先生があかねに教えていました。志ぐま師匠がまさに「死神」を演じている時です(第122席)。
ただし‟ゾーン”に入るのは演者ではなく観客の方。
「あくび指南」という演目が、観客を‟ゾーン”に引き込むのに相応しいものなのかどうかは分かりません。また別の演目の時になるのかもね。ここは分からないんだけど。
この流れで行くと‟ゾーン”だなと。
観客を‟ゾーン”に誘うには「引き算の芸」が必要です。最小限の変化で魅せるからこそ、演者の機微を見逃すまいとより深く引き込むんですからね。
その極致をあかねが見せるのかどうか。
ここが次回からのポイントになりそう!!
海外で修行を命じられた意味
3年間の修行中、学問先生がフランスのあかねの下を訪れていたみたい。お孫さんのエメリーさんの家がホームステイ先でしたからね。
出典:あかね噺|末永祐樹 馬上鷹将|集英社
あかねが学問先生に「海外で修行を命じられた意味」というのが、最近になって分かって来たんですと話していたようです。これを自分自身で見つける事そのものが、まず修行なんでしょうけどね。何でもペラペラ教えません。
この意味って何なんでしょうね?
この3つの壁を越えて伝える必要があるんでしょ?
「隅田川の首尾の松辺りに舟を舫いまして」と聞かされ、それを字幕で読まされても何が何やら分からない。「ご想像下さい」なんて通じないワケですよね。海外の人には。
これをどう表現して分かってもらうのか。
出典:あかね噺|末永祐樹 馬上鷹将|集英社第143席
海外の人であっても目に見えて分かる位にできなきゃならない。まんじゅうにしても風景にしても。これが最低限できてこそ笑ってもらえる。
海外の人に分かってもらえるだけの表現力を手にすればですね。日本人を前に演じた時には、その表現力が何十倍もに感じてもらえるようになる。より深く分かってもらえる表現力になる。
さらに表現力が豊かになれば、他のものを省けるようになる。ここが‟引き算の芸”につながって行くのかな。ここまで広がる可能性あるかもです。
こういう事なのかなぁと。
第146席の感想・考察まとめ
あくびにつられて間抜けっぷりも見せてくれたりゑんですが、まだまだこんなモンじゃないでしょう。あかねの高座がどこまでのものになっているのか。その実力で目にもの見せてやって欲しい!
- 学問先生も観に来てくれた
- 期待と疑心の2つの目を向けられる中の高座
- 日本の寄席に帰って来た事を実感するあかね
- 圧巻の情景描写
- あかねのあくびに周りもつられる
- 志ぐま師匠の芸に近づきつつある?
- 観客をゾーンに入れられるか?
- 海外で修行を命じられた意味とは
さて、次回は演目の後半かな?
いや、まだ中盤って感じになるだろうか…
続きが楽しみですよね!!
ありがとうございました!!
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